top of page

≪連載≫「マドプロを利用した国際出願」(外国商標制度その1)


マドプロは、日本での出願や登録を基礎として、本国官庁である日本国特許庁に国際登録の出願をし、本国官庁での指定商品・役務などのチェックの後、ジュネーブの国際事務局で国際段階での指定商品・役務などの方式審査を経て国際登録がなされ、国際出願した日(国際登録日)から、指定国で国内出願した場合と同様の保護が与えらえれるという制度です。なお、各国特許庁で、実体審査があり、暫定拒絶理由通報、あるいは、保護認容声明で、当該国・地域での実際の処分が決まります。


1.多くの国・地域を指定できる


2024年6月3日にカタールが入り、現在、116か国・地域を指定できます。重要国で、マドプロ未加盟の国・地域は、台湾、香港、サウジアラビアなど、限定的です。


2.マドプロの概要とメリット


①一つの国際出願で複数の指定国で権利取得できます。


②一つの国際登録を管理すればよく、管理が容易です。Madrid Monitorというツールで審査や権利の状況を閲覧可能です。


③国・地域については、事後指定が可能です。


④国際段階での更新費用支払いで、各指定国の権利の更新が可能です。


⑤費用は、各国出願する場合に比べて半額程度です。費用が安いのは、主に、出願時に現地代理人を経由しないためです。以前は、複数国出願しないとマドプロのメリットはないと言われていわれていましたが、最近は、1カ国でもマドプロ利用の方が安い国があるようです。なお、直接の費用が安い中国、韓国は日本登録を待たずに直接出願することが向いており、一方、マドプロ未加盟の台湾、香港は直接出願しかできません。


⑥国際出願から1年~1年半で審査が完了します。


⑦実際の事業の開始までに時間があるときや、既存の権利網に網をかぶせるのに向いていると言われています。



3.マドプロ利用時の注意点


①現地代理人と相談しながら、商標や商品・役務を調整しながら出願したいという場合には、マドプロの利用は向いていません。


②既存の商品・役務向きであり、全くの新商品・役務などには、あまり向いていません。


③日本登録と同一の商標で、同一の指定商品・役務の範囲内である必要があります。例えば、日本登録はカタカナで、外国ではアルファベットの商標を使いたいなら、日本で、再度、アルファベットの商標出願が必要です。商品・役務を追加したいときは、別出願をして、複数の基礎をベースにすることも可能です。


④アジアや米国などの審査主義国においては、指定商品・役務の補正が多い傾向があります。


⑤各国特許庁からの暫定拒絶理由通報を見ても、説明がなく、結局、現地代理人に聞かないと拒絶理由の意味が理解できないことが多いです。中間処理が発生するときは、途中受任となり、現地代理人による一からの説明が必要となり、費用がかかります。


⑥セントラルアタック※があります。これを回避するには、日本の登録後に出願することが一番で、そうすると外国出願のタイミングが若干遅れます。この遅れを少なくするために、国内出願の早期審査が利用できます。


⑦登録証が発行される国が少なく、中国など、模倣品対策や営業許可の関係で、現地で別途、登録証明書を取得する必要があるときがあります。


4.まとめ


マドプロは国内商標の延長です。マドプロを利用するなら、国内の指定商品・役務も外国出願を想定したものにする必要があります。優先権を使わない限り、国内と外国を合せる必要がない直接出願とは大きく違うところです。マドプロを利用する予定があるときは、国内出願時から、マークの在り方、商品・役務の在り方を、弁理士と相談してください。


マドプロでも、商標調査が重要であることは、直接出願と同様です。本来は、マドプロ出願の時でも、現地代理人による商標調査がお勧めです。この点、弊所では、マドプロ出願をするときは、最低でも無料の国際データベースを使った商標調査はやるようにしています。


マドプロのメリット・デメリットを把握していただき、上手く活用し、マドプロの利益を享受して、事業の推進に役立ていただければ望外の幸せです。


※セントラルアタック:基礎となる出願や登録が拒絶・無効等になると、国際登録は取消されます。その場合、各国の国内出願に変更をすることができます。


2024年6月21日

弁理士 西野 吉徳






≪連載≫「マドプロを利用した国際出願」(外国商標制度その1)

  • X
  • LinkedIn

商標

bottom of page